養育費が増額・減額される要素と養育費の未払いを防ぐ方法

Oおばちゃんです。

養育費が増額・減額される要素

養育費は一度決めたらその後ずっとその額が続くわけではありません。
養育費を取り決めたときには予想できなかった事情の変更があった時は、養育費の額の変更をすることができます。

養育費が増額される要素について

養育費が増額される要素についてはたとえば下記の通りです。

子どもが私立学校等に通うことになった場合

裁判所ホームページで公開されている「養育費・婚姻費用算定表」は、子どもが公立学校に通っていることを前提として教育費を算定されているため、私立学校に子どもが入学した場合、この算定表に基づいた養育費では学費が賄えない場合があります。
もともと私立学校に通わせると決めていたケースや、離婚後も相談のうえで私立学校に通わせることになった場合、子どもが医学部などに通うことになって通常以上の教育費がかかることになった場合には、負担の分担(養育費の増額)を請求することができます。
ただし、増額を考慮すべき事由があるからといって、すぐに養育費の増額が認められるわけではありません。
養育費受給者は養育費支払い義務者に対して、養育費額の増額を認めてもらえるようまずは話し合いで頼んでみて、話し合いがまとまらなければ裁判所が事情を考慮して養育費増額の審判をすることになります。

子どもが重い病気になった時

子どもが非常に重大な病気になり、通常以上に高額の医療費が必要になった時、養育費受給者はその負担分を養育費増額として養育費支払い者に事情変更があったとして養育費増額を求めることができます。

養育費が減額される要素について

一方で養育費が減額される可能性もあります。
養育費の支払義務の変更は、子どもの利益を最優先して、家庭裁判所に必要があると認められるときに認められます。
養育費が減額される要素についてはたとえば下記の通りです。

養育費支払い義務者の再婚や新たに実子が生まれた場合

養育費支払い義務者が再婚をして、その再婚相手が無収入である場合や、新たに実子が生まれた場合は、養育費支払い義務者の扶養対象が増えたという事情変更がありますので、請求をすれば養育費の減額が認められる可能性があります。
養育費支払い義務者が、十分な資力の持ち主であれば減額は認められないこともあります。

養育費支払い義務者が再婚し、養子縁組をした場合

養育費支払い義務者が再婚をして、その再婚相手の連れ子と養子縁組をした場合、上記の再婚及び新たに実子が生まれた場合と同様に考え、養育費支払い義務者の扶養対象が増えたという事情変更によって、請求をすれば養育費の減額が認められる可能性があります。

養育費支払い義務者の収入が減少した場合

離婚時に養育費の金額を決定しても、その後養育費支払い義務者の収入が減少してしまった場合、養育費減額の事情変更にあたるので、養育費支払い義務者が減額の請求をすれば認められる可能性があります。
しかしたとえ、収入が減少したからと言って、養育費支払い義務者に十分な資力がある場合は、養育費の減額は認められるべきではありません。
養育費支払い義務者は親として、子どもに対して扶養義務という重い責任を負っていることには変わりないからです。
また、収入が減少したように見せかけて、養育費減額を請求する事例も見受けられますので、注意が必要です。

養育費の未払いを防ぐ方法

養育費は受け取っている家庭が極端に少ないです。
というのは養育費支払い義務者が途中で義務を履行しなくなること、つまり養育費を支払わなくなってしまうことが原因です。

養育費は子どもが健全にかつ受けるべき教育を受けながら成長するために必要なお金です。
養育費受給者の権利ではなく、子どもの権利といえるものですので、その確保のために親権者(養育費受給者)は真剣に取り組む必要があります。

一例として、父母の話し合いで養育費を決定した場合の養育費の未払いを防ぐ方法を下記に説明します。

公正証書とはどんなものか

養育費の支払い方法、金額を決定したら「公正証書」を作っておきましょう。
公正証書は公証役場(公証役場一覧:https://www.koshonin.gr.jp/list)に出向いて、公証人に作成してもらう証書のことです。
養育費の支払いを父母間で約束した場合、法律的にはその約束は有効ですが、時間を経過して約束がうやむやになることがないよう公正証書にしておく方が安全です。
強制執行認諾文付き公正証書路があれば、養育費の支払いがされなくなった場合、裁判所に対し「強制執行」の申立をすることによって、養育費支払い義務者の財産の差し押さえることができます。
差し押さえの対象は、養育費支払い義務者がサラリーマンであれば、給与差押えをすることも、所有する不動産を差し押さえることもできます。
養育費支払い義務者が居住する賃貸物件の敷金債権を差し押さえることもできます。

公正証書作成の流れ

公正証書を作成する公証人は裁判官・検察官・弁護士などの経験者から法務大臣が任命します。

公正証書を作成するには、証人2人とともに、本人が公証役場に出向く必要があります。
公証役場では、公証人に作成してもらいたい公正証書の内容を説明します。
公証人はその説明を筆記して文書を作成し、本人と証人に読み聞かせます。
本人と証人とで、筆記が正確であることを確認した後、各自署名押印します。
最後に公証人が署名押印します。

公正証書の作成手数料は下記の通りとなります。
手数料は、養育費の金額(離婚時の公正証書作成で、財産分与、慰謝料も定める場合はその金額も関係します)によって変わります。

公正証書の目的の価額 手数料
100万円以下 5,000円
200万円以下 7,000円
500万円以下 11,000円
1,000万円以下 17,000円
3,000万円以下 3,000万円以下
5,000万円以下 29,000円
1億円以下 43,000円
3億円以下 43,000円+超過額5,000万円ごとに13,000円
10億円以下 95,000円+超過額5,000万円ごとに11,000円
10億円超 249,000円+超過額5,000万円ごとに8,000円

参考元:日本公証人連合会

養育費は子どもの健全な生活を守るための大切なものですから、養育費支払い義務者はもちろんのこと、養育費受給者も必ず受給できるように対応すべきものです。

協議で養育費を決めたときは必ず公正証書にしておくこと、もし養育費の支払いが滞りだしたら、すぐに催告や強制執行なりの手配をすることが重要です。

一方で、養育費支払い義務者がやむを得ない事情により減額を請求することもあります。

無理な養育費支払いによって、途中で本当に養育費が支払われなくなってしまうこともありますから、養育費受給者は事情をよく調べたうえで、減額請求に応じる姿勢も必要でしょう。

養育費を満期まで支払ってもらうためには、別居する養育費支払い義務者と子どもの交流も重要です。

面会交流を続けて、養育費を支払い続けようという気持ちにさせることが必要だからです。

養育費の計算や、支払いについて何か迷うことがあれば必ず弁護士に相談しましょう。

弁護士は上記に述べたことに加えて、個別の事情をかんがみて対応をアドバイスしてくれるでしょう。